愛媛大学 社会共創学部 環境デザイン学科

教員紹介STAFF

羽鳥 剛史HATORI Tsuyoshi

羽鳥 剛史
准教授
  • 専門分野土木計画学、合意形成論
  • 授業担当科目社会心理学、公共ガバナンス論、社会資本の整備と運用

これまで「いかにして人々が協力し合いながら、可能な限り合意を形成し、良質な国土・都市・地域づくりを進めていくことができるか」という問いを中心に、土木計画学、社会心理学、経済学等の社会科学諸分野に依拠しながら、地域デザイン・防災に関する教育研究を進めてきました。 初年次向けの『社会心理学』の授業では、都市や地域が抱える社会問題の背景に、個人の私的利益と社会全体の公共的利益とが対立する「社会的ジレンマ」の構造(例えば、ゴミのポイ捨ては、自分一人にとっては都合が良い行動であるが、社会全体にとっては望ましくない)が存在することを指摘し、社会的ジレンマを解決するための基本的な方法の習得に努めてきました。

初年次以降の『プロジェクト演習』では、県下の地域を対象に、学生自身が地域づくりや合意形成に関わる諸問題に取り組む演習を進めてきました。2018年度は、西日本豪雨により被災した西予市野村町において、地元の子供たちを中心とした復興ソングづくりのプロジェクト(「のむらのうた~がんばってみるけん 応援してやなぁ~」)に携わり、ミュージックビデオを制作しました。

これまでの主な研究テーマとして、1)社会的コミュニケーション・合意形成研究、2)都市・地域デザイン研究、3)地域防災とリスクコミュニケーション研究があり、3年次から始まる卒業研究もこれらのテーマと関連する形で進めてきました。例えば、2019年度の卒業研究では、1)に関連して、都市政策に対して過度に強固な意見を有する人であっても、話し合いの方法によっては、その強固な態度を軟化させ、円滑な合意形成を進められることを明らかにしました。2)に関連して、全国の都市を対象として、中心市街地の活性化を図る上で都市施設を空間上にどのように配置することが効果的かを検証し、既存施設との補完性や集積が鍵になることを明らかにしました。最後に、3)に関連して、前述の野村地域を対象として、洪水災害に対する住民理解を促進するための効果的なハザードマップを開発し、住民とのヒアリング調査を通じてその効果を検証しました。

これまでの研究・実務活動を通して、中心市街地の活性化や公共サービスの維持等、都市・地域が抱える課題を解決する上では、行政だけでなく、住民や企業等の主体的な参画が必要であることをより強く感じています。今後は、都市・地域の自律的な発展を促進する上で、人々が地域づくりについて自発的に学び会う「学習社会」の構築という課題を中心にして、都市・地域政策のあり方を検討していきたいと考えています。

図1 『社会心理学』のテキスト:『大衆社会の処方箋』(藤井・羽鳥著)

図2 野村町復興ソング「のむらのうた~がんばってみるけん 応援してやなぁ~」ミュージックビデオ(You Tubeより)

図3 話し合いの実験の様子

図4 都市の空間構造の分析

図5 リスク情報の提供ツール(ゾーン別ハザードマップ)の開発